RA 研究会 infomation

リサーチアドミニストレーションとは

アメリカのリサーチアドミニストレーター(RA)

詳しくはアメリカのRAの団体であるNCURA (National Council of University Research Administrators) から発行されているRA のための入門書 “THE ROLE OF RESEARCH ADOMINISTRATION” (SECOND EDITION)をお読みいただくとよい。JSTプログラム主監高橋 宏と金沢大学の有志で翻訳したものがあるので、ご希望の方はご連絡ください。 (現在,リサーチ・アドミニストレーター協議会事務局から配付しています。こちらまでご連絡ください。 rac@adm.kanazawa-u.ac.jp アットマークを小文字にしてください)

大学の事務の重要な部分であるリサーチアドミニストレーションには、大学による競争的資金の獲得とその監督、政府規則の遵守支援、他組織とのパートナーシップや共同事業の構築などが含まれる。RA は、競争的資金に関連する様々な事項において自身が所属する大学を代表し、大学の方針に基づいて業務を遂行する。即ち、RA の役割は、競争的資金に関する効果的な管理体制を大学に構築し、研究者、大学、配分機関のそれぞれに対して貢献することである。

アメリカのリサーチアドミニストレーションの歴史

第二次世界大戦以前にも一部の大学では、研究にたいする一定の管理体制が設けられていたが、競争的資金のマネジメント業務の多くは、第二次世界大戦後に米国の大学で始まった。第二次世界大戦以後の20 年間は、大学の仕組みの中で競争的資金が重要性を増した期間であった。1940 年には1,500 万ドルだった大学への競争的資金提供額は1965 年には13 億ドルに増加し、これにより、政府の競争的資金が大学の研究活動の主要な役割を果たすことが明確になった。政府の配分機関による競争的資金の額は大幅に増加し、そうした資金の適切な管理・運営に対する要求も強まり、発展した。
初期においては、多くの大学にとって、配分機関にはどのような組織があるか、どのような制度があるかなどの調査や特定が関心事であり、また研究提案書(競争的資金の応募
書類)は研究者によって作成されていた。つまり、初期においては、競争的資金の管理よりも主として獲得に重点が置かれていた。当時のリサーチアドミニストレーションオフィス(以後RA オフィス)が何をしていたかと言えば、競争的資金提供者(スポンサー)を探し、研究提案書作成書式を入手して研究者に提示し、必要な研究予算を計算し、研究提案書のコピーを作成するというような仕事でした。生命倫理や動物倫理、市民権や機会均等要件という重要な分野においてさえコンプライアンス要件は存在していなかった。

 その後、さらに競争的資金は大幅に増加し、RA オフィスの重要性は高まり、60 年代には、大学本部に統合されたRA オフィスの数が増大した。優れた研究提案書の企画、作成、提出に大きな努力が払われるようになった。しかし当時は、政府全体にまたがる競争的
資金会計指針や要件が整備されていなかったため、競争的資金の会計手続きは、一般的な会計手続きと差異はなかった。
それまで、RA オフィスでは研究提案書の事務処理に重点が置かれていたが、60 年代が終わりに近づくにつれて、その業務範囲が広げられ、その他の関心分野も整備されるようになった。政府の競争的資金の使途に関する確実な説明責任を果たすことと適切に監督することは、研究者が競争的資金提供者を探す活動を支援することと同じ程度に重要と考えられるようになり、方針の厳守が必要とされ、政府の示す指針と規則に、大学は目を向けなければならなくなった。60年代~70年代にかけて、行政管理予算局の通達A-21やA-110といった資金管理に関する指針が整備されていった。
80年代には政府はますます監査を重要視するようになり、競争的資金に関わる規制とコンプライアンス要件が大きく整備された。監査制度の整備と会計的コンプライアンスは、RA オフィスが一層発展する契機となり、大学は、組織運営におけるRA オフィスの重要性をますます認識するようになっていった。
さらに、会計面での問題以外でも、障害者の雇用や性差別、差別是正措置、人体実験、実験動物保護、環境への配慮や、研究費使用の不正等に関する様々な規則が制定された。こうした無数の規則を遵守するよう、大学のRAオフィスが大学キャンパス内の様々な部局事務部門に確実かつ適切に要件を管理させていた。
90年代は、さらに多くの各種規則が整備されたが、管理のための資金を大学は充分に間接経費では賄えず、大学の費用から持ち出すことが起きた。
20世紀の終わり頃から、研究提案書の電子化や競争的資金管理のための電子システムが導入され、RA オフィスにおいて現在最も重要なことは、そうした技術を利用する能力、電子システムの開発法や実施法を理解する能力、そして研究者がこうした新たな現実を受け入れる手助けをする能力を備えることとなった。

リサーチアドミニストレーションの機能

 全てのRA の基本的目標は、研究者のために貢献し、研究者が研究や学術的活動を進めら
れるようにすることである。RA の役割は「研究の管理(management of research)」即ち研究を管理するのではなく、「研究のための管理・支援(management for research)」であるという言葉を心に留めておくことは賢明なことである。

リサーチアドミニストレーターの業務としては、以下のようなものが挙げられる。

  • Pre-Award(企画・情報収集から申請まで)
    • 競争的資金による研究プロジェクトの策定
      • 競争的資金調達機会の特定
      • 研究提案書策定・作成支援
      • 研究提案書の査読・提案書提出の支援・監督および研究資金の額や内訳の交渉
      • 競争的資金獲得後のコンプライアンスと管理に関する基本的対応
    • 競争的資金獲得機会の提供

      研究者にアドバイスして、競争的資金を新規に獲得したり、現在獲得中の競争的資金を発展的に継続するなどの幅広い戦略を立案したり、または特定の研究プログラムを獲得すべく努力する。RA は利用可能なあらゆる資料を参照し、大学や個々の研究者が特定のプログラムの競争的資金獲得に成功できるかどうか正確に判断できるように、指導と支援を行う。

    • 研究申請書作成支援

      標準的な組織費用(間接経費にあたる)の算出や文書化、予算作成支援、競争的資金提供者(配分機関)の指針の解説、フォームやその他の必要な文書の作成、既定のフォーマットへの対応支援、常用文や大学の統計資料の編集、タイピング、書類編集、その他のサービスが含まれる。研究提案書の編集や校正をしたり、新任の研究者と経験のある研究者の間を取り持ったり、様々な形でより優れた研究提案書の策定を促進する。
      なお、カリキュラムの改善、大学全体の活性化、大学内イニシアティブ、主要設備の導入、等々、幅広い組織的イニシアティブなど大学全体に関わる競争的資金を獲得する場合においては、しばしば、RA が包括的な研究提案書のまとめ役かつ策定者となる。
      RA オフィスは、通常、企業の委託研究または技術移転契約の標準書式も提供する。 また、規模の小さい大学では、RA は新しい研究資金提供者を開拓し、大学と企業との間に協力的な関係を築きあげる努力をすることも必要となる。

    • 研究提案書の査読と提出

      RA オフィスは、提案書を査読することで、マッチングファンドや、新しいプログラム、スペース、人員の追加などに関する、予測し難い問題に対処し、大学を守る努力をしている。通常、RA オフィスには、全ての提出された提案書や資金獲得がなされた提案書が集中的に保管・管理される。リサーチアドミニストレーション活動の組織データベースが保管され、資金提供者やプロジェクトの分類、分野、部門、学科、学部、大学それぞれの活動に関して、大学本部に詳しい報告がなさる。

    • パートナーシップの構築

      大学内部における、類似分野または異なる分野の研究者間の協力や連携、また大学外部の他機関や他組織、地方の学校組織、商工会議所、企業または産業界との協力や連携の構築。RA が促進するものには、産業界との協同プロジェクトや、研究施設の共同利用、地方・地域組織への働きかけ、大規模の研究大学と小規模の大学や研究機関との連携構築などに加えて、そうした活動の全てを融合した大規模研究センターを構築することなども含まれる。

    • アドボカシー(啓発活動)

      大学において競争的資金活動を活発化するには、競争的資金による研究活動に対する大学内の環境の向上・活性化に向けて取り組むアドボカシー(啓発活動)が必要となる。しばしば、RA はこれまで競争的資金による研究活動に重きが置かれていなかった大学内の環境において競争的資金による研究活動の重要性を主張し、啓発するという課題に直面する。また、競争的資金提供者の様々な要求に応えるために大学の従来の方針やプロセスに調整の必要が生じた場合、RA はその方針を作成する役割も担う。

      Post-Award(採択後から事業終了まで)

    • 競争的資金の管理

      RA には、大学が配分機関の指針を必ず遵守するようにする責任がある。競争的資金を管理する規則は、年々数が増え、複雑になっている。そこで、全米の10 の政府系の競争的資金配分機関と全米の100 の大学の代表者により構成された”政府実証パートナーシップ”(FDP、Federal Demonstration Partnership)の活動が為されており、規則に基づく事務上の負荷(administrative burden)を軽減する努力がおこなわれている。
      競争的資金管理の基本的事項を監督している行政管理予算局(OMB)は、会計上の必要条件を通達(Circular)として定めており、さらに競争的資金配分機関(ファンディングエージェンシー)も各プログラムに対する指針を設けている。RAは各種規則の階層的優先順位を理解し、また常に各種規則の最新の改定状況を把握し、さらに、様々な事項毎に、配分機関側の相談すべき担当者(部門)を知っておく必要がある。

    • 会計システムの構築と維持

       各プロジェクトの資金は別々の口座で管理され、RAは資金提供側の指針に基づき、正確で一貫性のある会計システムを構築・維持しなければならない。多くの場合、絶えず変更される資金提供者(配分機関)の指針に対応して、購入部門に助言し、大学側の方針や手順の策定と実施を支援することも、RAの役割である。さらに、装置購入や施設建設などの特定の事柄が確実に政府の指針または民間の指針に準拠するように、大学当局に指針を提供するのもRAの役割として挙げられる。その他にも、資金提供者(配分機関)の指針に基づき、RAが人材や施設、大学の方針等にアドバイスすることも必要である。

    • 報告書の提出

      研究代表者は、研究面での進捗について、プロジェクト期間中の定期的報告、および終了時に研究資金提供者(配分機関)に報告書を提出する必要がある。一方、大学は、プロジェクトの会計状況を報告しなければならない。多くの場合、RAは研究進捗報告の記載事項について丁寧に研究者に知らせ、会計報告および説明責任が確実に果たされるようにする。

      知的財産・技術移転